職場で急に具合が悪くなった人が出たとき、壁の緊急連絡表を手に取る。そこに書かれた住所と電話番号で、相談先へ連絡し、救急車に入口を案内できるでしょうか。

今回は、架空地域「遠瀬郷」の作業拠点で、本社の総務担当者と現場責任者が、急病対応に使う連絡表を見直します。相談先や受診先の情報に、構内の入口と建物の案内を添えていきます。

緊急時は119番を優先します。マップに載せた医療機関へ順番に電話してから救急要請する運用にはしません。 初動の考え方は、第1話で整理しています。

連絡表はあるのに場所を説明できない

遠瀬郷の山間部にある作業拠点へ、本社の総務担当者が訪れました。現場責任者と一緒に、事務所の壁に貼った緊急連絡表を見直すためです。

表には、拠点の住所、近くの診療所の電話番号、本社の代表番号が載っていました。総務担当者が、別の拠点から来ていた応援者に聞きます。

「もしここで救急車を呼ぶことになったら、この表だけで場所を説明できますか」

応援者は住所を読み上げましたが、その先で止まりました。道路に面した門は二つ。地図に出る正門は普段閉まっており、車両は別の門を使っています。現場の人が使う門の呼び名も、表には載っていません。

さらに、診療所の受付時間は古いままでした。現場責任者は変更を知っていましたが、本社側の表は更新されていなかったのです。

いつもの人なら説明できることが、応援に来た人には分からない。総務担当者は、連絡表の横に、門と建物の位置を書き始めました。

まずその場で説明する情報をそろえる

最初に整えたいのは、自分たちの事業場の情報です。所在地、建物名、実際に使える入口、目印、通報している人へ折り返すための連絡先をまとめます。

消防庁は、119番通報で住所や通報者の名前・連絡先などを聞くと案内しています。通報では通信指令員の質問に答えます。消防庁の119番緊急通報案内

住所の横には、入口が分かる簡単な構内図を添えます。門、建物、通路、目印を、現場以外の人にも通じる名前で書きます。閉まっている門や、時間帯によって使えない入口も区別します。

実際にどこへ誘導するかは、その場の状況と通信指令員・救急隊の指示に従います。図に書いた経路で必ず進入できると決めつけず、工事や車両、施錠の状況が変わっていないか確認しておきます。

一枚にまとめる情報の例

次は、平時に確認する項目と構内図の見本です。今回のケースでは、①正門は普段施錠され、②白い看板のある車両門を使う設定にしました。住所や電話番号などは、自拠点の情報で埋める欄として示しています。

遠瀬郷ケースノート|第3話|架空の見本場所の案内と連絡情報を、一組にする

緊急時は119番。通信指令員の質問に答え、指示に従います。

見直し後の構内図

所在地・建物名・折返し先
自拠点の情報を記入。①と②を区別して伝えられるようにします。

架空の配置・縮尺なし。実際の誘導は通信指令員・救急隊の指示に従います。

平時に埋める連絡情報
通報・付き添い・入口の対応
各担当、不在時の代わり、施錠の扱い。誘導で本人への対応が途切れない分担に。
地域の相談先
名称・電話番号・対象地域・利用時間を確認して記入。
受診先の候補
名称・所在地・診療内容・受付時間・連絡先・確認日を記入。
移動・付き添いの手配
手配先と連絡先、夜間等の制約を確認。
管理・更新
本社と現場の確認担当・更新日・原本と控えの置き場所を記入。

本社が原本を更新し、現場が入口や構内の変更を知らせる。
古い控えも差し替え、別の人が説明できるか確かめます。

連絡欄は未記入です。使用する拠点の情報を確認して記入します。

元の連絡表と比べてみる

元の表にあったのは、住所、診療所の電話番号、本社の代表番号。入口の区別、現在の受付時間、担当不在時の連絡先、更新担当は分かりませんでした。

緊急時の119番と、そのほかの相談先・受診先は、見た目でも区別します。番号の並びを、そのまま「上から順にかける手順」に見せないことが大切です。

通報、付き添い、誘導のすべてに別の人を割り当てられるとは限りません。誘導のために本人への対応が途切れないよう、実際の人数でできる分担を考えます。

このマップは拠点の共通情報を載せる資料です。個人の病歴や今回の症状などは、誰もが見る連絡表に書き加えず、個別対応の記録として扱います。

受診先の情報を調べ、使うときに確かめる

受診先の候補を調べる入口として、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)があります。場所や受付時間などから医療機関を検索できます。

受診につなぐ際には、本人の状態と受けた案内に応じて、その時点での対応可否を確認します。移動時間も、道路状況や時間帯によって変わります。

救急相談を利用する場合は、拠点の所在地で使える窓口と時間帯を確認します。#7119の実施状況は、消防庁の案内から調べられます。

移動方法は、本人の状態と、相談先から受けた指示を踏まえて検討します。マップには、その際に使う手配先や夜間の制約を載せます。体調の悪い本人が自分で運転する前提で計画しないことも大切です。

本社と現場で直し別の人に使ってもらう

総務担当者は、その場で現場責任者と二つの門を確認しました。普段施錠している①正門と、白い看板のある②車両門を区別し、建物までの経路を構内図に示しました。施錠の扱いも確認し、開ける担当と不在時の連絡先を追記しました。

本社側では、診療所の現在の受付時間などを確認し、確認日とともに更新しました。原本を直す担当は総務、入口や構内の変更を知らせる担当は現場責任者とし、印刷した古い控えも差し替えました。

そのうえで、先ほどの応援者に、もう一度説明してもらいました。今度は、住所に続けて使う入口の目印を伝え、図を指しながら建物まで案内できました。本社の担当者も、夜間に困ったときの相談先を同じ資料から見つけられました。

これは、紙を使った社内での確認です。通報の練習や接続確認のために、実際の119番へ電話はしません。消防庁も、接続確認を目的とした119番通報を控えるよう案内しています。119番緊急通報の注意事項

最初に応援者が説明につまったのは、住所を読み上げた、その先でした。見直した連絡表には、現場で「いつもの入口」と呼んでいた場所が、白い看板のある車両門として載っています。次にここへ来る人にも、同じ場所を伝えられるようになりました。

遠瀬郷ケースノートの一覧を見る

※地域・事業場・人物・経過は架空です。