集団分析を、職場改善に活かす

報告書の見方と、小さな会社の改善例

集団分析は、職場の良い点や気になる傾向を確かめ、仕事の量や進め方を見直すために使えます。報告書を受け取ったら、気になる項目と現場の状況を照らし合わせ、会社として試す改善を決めてみましょう。

このページでは、報告書の読み始め方と、20人の架空の会社が改善を考える例を紹介します。社内で進めるのは、結果の活用と改善です。個人の回答を会社で集め、生データから分析し直す必要はありません。

このページでわかること

集団分析は、職場改善の手掛かり

ストレスチェックには、本人が自分のストレスに気づく目的と、職場の状況を把握して改善に役立てる目的があります。集団分析とその結果を踏まえた職場環境の改善は、事業者の努力義務です。

個人の面接指導では、その方の健康と仕事の状況を考えます。集団分析では、仕事の量、裁量、周囲の支援などに注目して、職場全体で変えられることを探します。高ストレス者だけに対応して終えると、仕事の条件を見直す機会を逃すことがあります。

報告書のどこを見る?

報告書から、職場で確かめることへ
  1. 対象を確かめる職場・実施時期・回答人数・比較条件
  2. 気になる項目を見る仕事量・裁量・上司や同僚の支援
  3. 現場で確かめるどの仕事や場面で起きているか
  4. 改善を一つ試す担当と振り返る時期を決める

最初に、対象の職場、実施時期、有効な回答数、使われた帳票を確認します。前年と比較する場合も、対象者の入替えや実施時期、質問票・集計方法が変わっていないかを確かめます。

代表的な帳票に「仕事のストレス判定図」があります。仕事の量的負荷、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援を用いて、集団の仕事上のストレス要因を捉えるものです。

注目する項目 帳票を見てから現場で確かめること
仕事の量的負荷 仕事量が多すぎたり、時間に余裕がなかったりしないか。どの仕事・時期に負担が集中するか
仕事のコントロール 仕事の順番や進め方を調整できるか。判断権限が不足していないか
上司・同僚の支援 相談や協力を得やすいか。支援があっても負担が残る場面は何か
全体の傾向・変化 前年や他の項目と合わせると、何を確かめる必要があるか

判定図の健康リスクは、標準集団を100とした比較の指標です。「120なら120%の人が病気になる」「100未満なら改善不要」と読むものではありません。帳票によって、点数が高いほど良い項目と負担が大きい項目があります。軸・凡例・説明を確認してから読みます。

数字を一つ選んで原因を確定するより、「この項目の背景を現場で確かめよう」と問いを立てると、その後の話し合いにつながります。次の架空例で、気になる傾向を現場への問いに変え、改善を一つ選ぶ流れを見てみましょう。

集団分析の結果を、具体的な改善につなげる

受注処理や納期調整を行う、従業員20人・1拠点の会社を例に考えます。有効回答18人の結果を、会社全体で一つにまとめた想定です。

読み方を説明するための架空例です。この例では従業員全員を男性と設定し、従来の男性基準で作図しています。公式プログラムの出力帳票や、実際の企業の結果ではありません。

この図は有効回答18人の平均で、個人ごとの差や、集計に含まれなかった2人の状況までは示しません。

二つの図を分けて見てみましょう。丸は架空職場18人の平均、ひし形は過去の調査に基づく男性の比較基準です。斜めの線の数字は、基準を100とした健康リスクを表します。これはモデルに基づく比較指標です。100は安全・危険の境界ではなく、病気になる人の割合や個人の診断を示すものでもありません。

① 仕事の量と、調整できる余地

量的負荷はこの職場9.5、比較基準8.7。コントロールはこの職場6.5、比較基準7.9。健康リスク120。

量的負荷-コントロールの健康リスク:120

仕事の量と裁量に注目します。
回答の平均では、比較基準より仕事量の負担が大きく、仕事の進め方を調整できる余地が小さい方向にあります。どの業務や場面で負担が集中するのか、確かめる手掛かりになります。

仕事の量と裁量の判定図を拡大して見る

② 周囲からの支援

上司の支援はこの職場8.0、比較基準7.5。同僚の支援はこの職場8.5、比較基準8.1。健康リスク92。

職場の支援の健康リスク:92

周囲からの支援も合わせて見ます。
回答の平均では、上司・同僚の支援を得られている程度は、いずれも比較基準より高い方向にあります。ただし、平均値だけで全員が相談しやすいとは判断できません。助け合いで補えていることと、補い切れないことを確かめます。

職場の支援の判定図を拡大して見る

この例の総合健康リスクは110です。総合値だけで判断せず、仕事量と裁量、周囲からの支援を分けて見ると、職場で確かめたいことを具体的にできます。

図の作成方法と参考資料

職業性ストレス簡易調査票の従来方式を用いた独自作図です。比較基準には、過去の調査に基づいて定められた固定の値を使っています。基準との差だけで、統計的に有意な差があると判断することはできません。基準値は男性の訂正後の値(量的負荷8.7、コントロール7.9、上司の支援7.5、同僚の支援8.1)、係数は順に0.076、−0.089、−0.097、−0.097。比較基準や帳票の方式が異なる場合、そのまま数値を比較できません。

説明用の尺度平均は9.5、6.5、8.0、8.5。総合値は丸め前の二つの健康リスクから算出し、表示時に整数へ丸めています。採点済み尺度の架空値を用いており、実在する個人の回答は使用していません。

実践1 仕事の量と裁量に注目して、現場で確かめる

担当者は「助け合えているから問題ない」とせず、仕事の量とコントロールの項目から、予定を調整しにくい場面があるのではないかと考えます。ただし、報告書だけで原因は決めません。

職場で「急な依頼が入ったとき、仕事の優先順位を誰が決めているか」「忙しい時間帯の偏りはあるか」を聞きます。個人の受検結果や回答内容を話してもらう場にはしません。

実践2 実態に合う改善を一つ選ぶ

話し合いで、同僚同士では助け合えているものの、急ぎの依頼を各人が引き受け、既存の納期を変える判断ができない状況が分かったと仮定します。そこで、急な依頼が入ったら管理職が優先順位と納期を調整し、週に一度、仕事の割り振りを確認する方法を試すことにします。

この例の改善は、どの職場にも当てはまる正解ではありません。実際の仕事の流れを確かめた結果として選びます。

実践3 担当・権限・振り返りまで決める

決めておくこと この例の内容
気づき 仕事の量と、優先順位を調整しにくい点が気になる
現場で確かめたこと 急な依頼の納期調整を、各人が抱えていた
試すこと 管理職が優先順位と納期を調整し、週1回の割振り確認を行う
担当 当該職場の管理職
必要な権限・予算・支援 管理職に納期調整の権限を持たせ、確認の時間を確保する
期限 来月から試す
振り返る時期・結果 1か月後に、優先順位が決まらず抱える場面や納期調整のしやすさを確認する。他の人へ負担が移っていないかも確かめ、結果を記録する

従業員に「もっと協力して」「ストレスに強くなって」と求めるだけでは、負担の条件が変わりません。経営者や管理職が動かせる仕事の進め方、権限、人員、時間も検討します。決めた内容は、普段使っている会議記録などへ残せます。

職場で話し合うときの問い

悪い点を探すだけでなく、続けたい良い点も共有します。次の問いを使って、変えることを絞ってみましょう。

  • 続けたい良い点や、助けになっている仕組みは何か。
  • どんな仕事・場面で困るか。
  • 何を先に変えると、仕事を進めやすくなりそうか。
  • 誰の判断や協力、どのくらいの時間・人員が必要か。
  • いつ、何を見て確かめ直すか。

会社で確かめたいことを一つ決めると、話し合いを具体的な改善につなげやすくなります。

少人数の集計と個人の特定に気を付ける

集団分析は、原則として有効な回答が10人以上ある集団を対象に考えます。在籍20人でも、5人の部署ごとに分けたり、有効回答が少なかったりすれば、個人の特定につながるおそれがあります。

少人数では集計単位を大きくすることを検討し、提供される帳票や方法を委託先と確認します。10人未満でも個人が特定されない方法で実施できる場合はありますが、極端な少人数での実施は不適切とされています。「全員が同意したから何でも共有できる」と考えないことが大切です。

小さな部署の順位表や、他の社内情報と組み合わせると誰か分かる資料の共有も避けます。職場への伝え方は、準備段階から確認しておきましょう。

2027年4月1日からは、個人が特定されない方法で集団分析を行うことが省令上も明記されます。従来から必要だった個人特定への配慮を変更する趣旨ではありません。

振り返り、次の改善につなげる

改善を試したら、仕事を進めやすくなったか、負担が他の人や工程へ移っていないかを確かめます。次回の数値だけを成果にせず、日々の状況や現場の声も合わせて振り返ります。

少人数等の理由で集団分析を利用できない場合でも、仕事の困り事を聞き、進め方を見直すことはできます。話し合いの進め方には、こころの耳の職場環境改善ツールが参考になります。

内容確認日:2026年10月16日