1人で回している間、現場は“脳内”で成立します。
どこが熱いか。どこを触ってはいけないか。いつ止まるか。
全部、あなたの頭の中にあります。
それで回ってしまうのが、1人現場の強さです。
でも、1人目を雇った瞬間に、これが崩れます。
新人さんは、危険を知らないんじゃない。
危険の前提が共有されていないのです。
※現場で言う「KY(危険予知)」は、空気を読む話じゃなくて、危ないポイントを先に見つける話です。
事故は「作業が分からない」より、「前提がズレる」で起きる
教える側は、こう思いがちです。
- 手順を教えれば大丈夫
- 見て覚えてくれるだろう
- 危なそうなら察してくれるだろう
でも現実は、逆です。
新人は、手順より先に「ここまでOK」を探します。
そして、その“OKの範囲”がズレると、事故が起きます。
まず渡すのは、マニュアルじゃない。「境界線」です
第1週で必要なのは、分厚い手順書じゃありません。
境界線(ここから先は危ない)です。
焙煎所なら、最初にこれを言葉にして渡します。
- 触らない(熱い部品/回るもの/刃物・封止機など)
- 近づかない(焙煎機の周り/排気まわり/危険区域)
- 止めていい(いつもと違う/分からない/迷った)
“分からない時は止める”が言えていれば、事故は減ります。
「頭の中のKY(危険予知)」を外に出す:言語化する
新人に渡すのは、完璧な安全教育じゃなくていい。
まず3つ、言葉にします。
1) 危険な場所の名前(熱いエリア=危険区域)
「そこ、熱い。」だけだと毎回ブレます。
場所に名前をつけます。
- 熱いエリア(危険区域)
- 立ち入り禁止
紙に書いて貼ることで、止めやすくなります。
2) 触っていい物/触らない物
触っていい物は何か。
触ってはいけない物は何か。
これが曖昧だと、遠慮が事故になります。
「触らなくていい」は、立派な安全対策です。
3) 止める言葉(合言葉)
迷ったら、何と言えば止められるか。
これを1つ決めます。
「一回止めます。見てください。」
短いほど回ります。
教える側が忙しいほど、事故が起きる
採用直後は忙しい。
忙しいから人を雇う。
でも忙しいと、教え方が雑になります。
- “後で教える”が積み上がる
- “見てて”が増える
- “たぶん分かった”で次に進む
ここで事故が起きます。
だから、初日は時間を取る。
最初にまず10分止める。その10分が、あとで何十時間も救います。
新人が言えない言葉を、先にあなたが言う
新人が一番言いにくいのは、これです。
- 分かりません
- まだ自信がありません
- いま止めたいです
だから、先に社長が言います。
「分からなかったら止めて。止めてくれたら助かる。」
これで空気が変わります。
忙しい時ほど、これを守って(採用編)
「境界線を先に出す。止める言葉を先に決める。」
明日やること(3つ)
- 危険な場所に名前をつける(熱いエリア=危険区域/立ち入り禁止)
- 触っていい物/触らない物を3つずつ書く
- 止める合言葉を1つ決める(「一回止めます。見てください。」)
他業種の読み替え:焙煎機=危険設備/排気=熱・においの流れ/袋詰め=反復作業/採用=前提共有の開始
※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。
