第13話 1人目採用:社長の“危険予知”が通用しなくなる

1人で回している間、現場は“脳内”で成立します。
どこが熱いか。どこを触ってはいけないか。いつ止まるか。
全部、あなたの頭の中にあります。

それで回ってしまうのが、1人現場の強さです。
でも、1人目を雇った瞬間に、これが崩れます。

新人さんは、危険を知らないんじゃない。
危険の前提が共有されていないのです。

※現場で言う「KY(危険予知)」は、空気を読む話じゃなくて、危ないポイントを先に見つける話です。


事故は「作業が分からない」より、「前提がズレる」で起きる

教える側は、こう思いがちです。

  • 手順を教えれば大丈夫
  • 見て覚えてくれるだろう
  • 危なそうなら察してくれるだろう

でも現実は、逆です。

新人は、手順より先に「ここまでOK」を探します。
そして、その“OKの範囲”がズレると、事故が起きます。


まず渡すのは、マニュアルじゃない。「境界線」です

第1週で必要なのは、分厚い手順書じゃありません。
境界線(ここから先は危ない)です。

焙煎所なら、最初にこれを言葉にして渡します。

  • 触らない(熱い部品/回るもの/刃物・封止機など)
  • 近づかない(焙煎機の周り/排気まわり/危険区域)
  • 止めていい(いつもと違う/分からない/迷った)

“分からない時は止める”が言えていれば、事故は減ります。


「頭の中のKY(危険予知)」を外に出す:言語化する

新人に渡すのは、完璧な安全教育じゃなくていい。
まず3つ、言葉にします。

1) 危険な場所の名前(熱いエリア=危険区域)

「そこ、熱い。」だけだと毎回ブレます。
場所に名前をつけます。

  • 熱いエリア(危険区域)
  • 立ち入り禁止

紙に書いて貼ることで、止めやすくなります。

2) 触っていい物/触らない物

触っていい物は何か。
触ってはいけない物は何か。
これが曖昧だと、遠慮が事故になります。

「触らなくていい」は、立派な安全対策です。

3) 止める言葉(合言葉)

迷ったら、何と言えば止められるか。
これを1つ決めます。

「一回止めます。見てください。」

短いほど回ります。


教える側が忙しいほど、事故が起きる

採用直後は忙しい。
忙しいから人を雇う。
でも忙しいと、教え方が雑になります。

  • “後で教える”が積み上がる
  • “見てて”が増える
  • “たぶん分かった”で次に進む

ここで事故が起きます。

だから、初日は時間を取る。
最初にまず10分止める。その10分が、あとで何十時間も救います。


新人が言えない言葉を、先にあなたが言う

新人が一番言いにくいのは、これです。

  • 分かりません
  • まだ自信がありません
  • いま止めたいです

だから、先に社長が言います。

「分からなかったら止めて。止めてくれたら助かる。」

これで空気が変わります。


忙しい時ほど、これを守って(採用編)

「境界線を先に出す。止める言葉を先に決める。」


明日やること(3つ)

  1. 危険な場所に名前をつける(熱いエリア=危険区域/立ち入り禁止)
  2. 触っていい物/触らない物を3つずつ書く
  3. 止める合言葉を1つ決める(「一回止めます。見てください。」)

他業種の読み替え:焙煎機=危険設備/排気=熱・においの流れ/袋詰め=反復作業/採用=前提共有の開始

※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。

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