はじめに
焙煎所×ECを舞台に、1人開業から小さなチーム化まで「回る」労働衛生を24話で描く連載です。粉じん・熱・作業姿勢・安全衛生教育・ヒヤリハットなどを、現場で回る言葉と手順に落とし込みます。焙煎所に限らず、小規模現場の改善にそのまま転用できます。
※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。
この連載の読み方
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順番に読む:1人開業 → 売れ始め → 採用 → 安定運用の流れで理解できます
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刺さる回から読む:困りごとがある人は、必要な回だけ先に読んでもOKです
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持ち帰り方:各話の最後に「明日やること」を3つ残します(やることを増やさない)
まず読むなら(迷ったらここ)
目次(全24話)
第1章 開業前夜:設計で9割決まる(1〜6話)
物件の後悔は、開業後に毎日くる。だから先に「回る形」を見る。
見るべきは内装より、動線(置き場と通路)と換気(排気の出口とこもり)。
内覧では「吸う/出す」「出口の向き」を確認し、迷ったら要所だけ専門家の目を入れる。
✅第2話 搬入計画:腰を痛めるのは“重さ”より“無理な一発”
搬入は気合いより設計。腰は「持てるけど無理」な一発でやられる。
まず“持たない前提”を考え、次に通り道と置き場を確保する。
豆(袋)・包材(箱)・機材の順に詰まり所を潰し、機材は短距離で入るタイミングに寄せる。
✅第3話 排気・煙・におい:排気は「出し方」で決まる(頭痛と近隣トラブルを防ぐ)
排気トラブルは大きく2つ。作業者の体調に出るもの、近隣に波及するもの。
設備名より「どこへ、どう流すか」。呼吸域(顔の高さ)にこもりがないかを見る。
出口の位置と向きで、影響も、においの印象も変わる。
✅第4話 火・熱・火傷:危険区域を「言葉」で固定する(触る前に止める)
火傷は「触った瞬間」ではなく、「触る前の動き」で決まっている。
狭い通路・荷物・会話で距離感が狂い、避けたつもりが熱源に当たる。
危険区域を言葉で固定し、「触るな・近づくな」をルールにして事故を減らす。
✅第5話 粉じん・チャフ・清掃:咳と火災リスクは“掃除のやり方”で変わる
舞いやすいのは粉(微粉)とチャフ(薄皮)。特にチャフは堆積が火災リスクに直結する。
掃除は“新品みたいに”ではなく「増えてないか」を見る。週1で溜まりポイントを確認。
忙しい時ほど「掃くな。吸って。」/「吹くな。散らすだけ。」熱いチャフは冷ましてから。
✅第6話 初期の作業設計:立ちっぱを前提にしない(休憩を最初から組み込む)
立ちっぱなしが続くなら、意志ではなく「設計上の無理」が残っている。
座れる場所を先に作り、休むタイミングを“区切り”で固定し、戻りやすくする。
休憩は回復ではなく事故予防。ミスとヒヤリが増える前に、手順に組み込む。
第2章 売れ始め:体が先に壊れがち(7〜12話)
✅第7話 初受注ラッシュ:梱包で腰を痛める前に“台の高さ”を決める
梱包は勢いで回せるけど、腰は勢いで壊れる。
効くのは気合いより、台の高さと置き場で「前かがみ」を減らすこと。
明日、梱包台を仮でいいから決めて、2回で運ぶ・小分けで運ぶに切り替える。
✅第8話 反復地獄:計量・封止・ラベル貼りで手首が痛む(分割と交代)
反復作業は、集中力より先に手首と肩が先に削れる。
ミスの原因は器用さより「同じ動きが長すぎる」こと。
30分単位で区切って手順を分け、詰め込みをやめて回す。
✅第9話 ミスが出る日:ピーク時の事故は「焦り」で起きる(刻む・止める)
事故が増えるのは忙しい日ではなく、焦って止まれない日。
腕前の問題に見えて、実際は「止める言葉」が無いのが原因。
忙しい時ほど「いつもと違う」なら止めて呼ぶ、を先に決めておく。
✅第10話 クレーム初回:返信テンプレと“対応範囲”を先に決める
クレーム対応は、正しさより「迷わない仕組み」で消耗が決まる。
攻撃的な言葉に引っ張られず、事実確認と対応範囲の案内に寄せる。
まず3通の返信テンプレを用意し、必要事項を案内したら区切る。
✅第11話 睡眠が削れる:寝不足のまま回さない(締切の波を見える化)
寝不足は判断力を落とし、ミスとヒヤリが増える。
原因は忙しさより、締切の波が見えていないこと。
発送・焙煎・在庫の締切を見える化し、終業前に「明日の3点」を書いて止める。
✅第12話 家族時間が侵食:仕事の境界線を“仕組み”にする(通知・時間割)
売れ始めると仕事が生活に食い込み、境界線が崩れやすい。
通知はゼロにせず「開ける時間」を固定し、割り込み枠を最初から入れる。
合言葉は「いまは家。」——境界線を言葉と手順で守る。
第3章 小さなチーム:雇った瞬間に事故る(13〜18話)
採用した瞬間、現場の“暗黙の了解”は通じなくなる。
事故は本人の注意不足より、伝わっていない手順と境界で起きる。
まずは「止めていい」「ここまで」を言葉にして、新人が迷わない形にする。
✅第14話 OJTの最小形:チェックリスト10行で回す(立派なマニュアル不要)
立派なマニュアルより、チェックリスト10行のほうが回る。
手順は長くすると守られない。要点を“順番”と“確認点”に落とす。
現場で差し替え前提の雛形を作り、毎週1つだけ直して育てる。
✅第15話 「止めてOK」文化:新人が事故らない唯一のルール
新人が事故らない鍵は、「迷ったら止めて呼んでいい」を先に約束すること。
止められない現場は、焦りが積み上がって必ず外す日が来る。
短い合言葉と、止め方(仮置き・一言メモ)を最初に決めておく。
✅第16話 言葉の統一:同じ作業を同じ言葉で呼ぶ(混乱=事故)
同じ作業を違う言葉で呼ぶと、ミスが増える。
「あれ」「それ」が増えるほど、受け渡しが崩れて事故が近づく。
現場でよく出る5語を選び、呼び方を統一して紙に貼る。
休憩は制度の話だけではなく、連続作業を区切る“作業管理”でも決まる。
節目で小休止に入る条件と、止め方を先に決めると揉めにくい。
忙しい時ほど「いったん区切る」を合言葉にして判断力を戻す。
✅第18話 ヒヤリハット:集め方を仕組みにする(責めない・共有・潰す)
ヒヤリハットは事故の手前話ではなく、現場の詰まりを見つける材料。
1行で出せる形にし、「責めない」を宣言し、週1回5分で共有する。
毎週1つを確実に小さくし、写真で“やった証拠”を残して回す。
第4章 安定運用:増やさず、捨てて、回す(19〜24話)
売上が伸びると、最初に崩れるのは品質より「余裕」です。
余裕が崩れると、品質と安全が一緒に崩れます。
忙しい日でも崩さない“守る基準”を決め、下回りそうなら止める。
仕組みは増えるほど、現場は疲れます。
守れないルールが混ざると、守るべきものまで薄まる。
ルールを棚卸しして「残す/捨てる」を決め、守ることができる形で残す。
✅第21話 データ疲れ:取る/捨てるの線引き(目的を固定する)
データは取れば取るほど、判断が遅くなる。
目的のない記録は、現場の体力を削るだけになる。
「何のために見るか」を固定し、見ないものは取らない。
✅第22話 週次レビュー:まず毎週1つ直す(施策過多を防ぐ)
週次レビューは反省会ではなく、現場を整える時間。
直すことが多いほど、何も直らずに終わる。
今週の“つまずきの芽”をまず1つ選び、形を1つ変える。
✅第23話 トラブル回復:事故後の“再発防止”を形骸化させない(続く形にする)
トラブル後に止まるのは、対策が重くなって続かないから。
先に決めるのは「次はどこで止めるか」——止める条件が再発を減らす。
事実を短く残し、止め方と形の変更を1つに絞って回す。
✅第24話 「回る」現場の思想:止められる/基準を守る/形を変える
回る現場は、迷った時に戻る場所が決まっている。
止められる/基準を守る/形を変える——この3本柱で回し続ける。
つまずきを隠さず、芽のうちに小さくし続ける。
まとめ
仕組みが回ると、現場が回る。回す産業保健/回る労働衛生。
読む順番に迷ったら:第1章(設計)→第2章(運用)→第3章(育てる)。
似た詰まりがある場合は、現場に合わせて「回る形」へ落とし込む支援も行っています。
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