第1話 物件探し:焙煎所は「動線」と「換気」で決まる


開業前、いちばんテンションが上がるのは物件探しです。
でも、いちばん後悔が残りやすいのも物件です。

理由はシンプル。
物件の“しんどさ”は、開業後に毎日くる。
そして、後から直しにくい。

この回で言いたいのはこれ。

焙煎所の物件は、動線 と換気(排気)で決まる。

内装がきれいかどうかより、
「回るかどうか」を先に見ます。


まず、焙煎所の動線はこう考える

焙煎所は、作業の流れがおおよそ決まっています。

入荷 → 保管 → 焙煎 → 冷却 → 計量 → 包装 → 梱包 → 出荷

この順番を、できるだけ「一筆書き」にしたい。
往復が増えるほど、疲れとミスが増えるからです。

動線で見落としがちな3つ

  • 通路が“人ひとり分”で足りない(箱を持つと詰まる)
  • 置き場が決まらず、床が置き場になる(第7話につながる)
  • 梱包・出荷が最後に押し込まれて、作業台が低い(第7話・第8話に繋がる)

物件を見るときは、最初に「作業の順番」を決めて、
その順番どおりに歩いてみるのが一番早いです。


換気(排気)は“あとで何とか”が難しい

焙煎所で換気が弱いと、困りごとは2種類出ます。

  • 体の不調(頭痛・喉の違和感・目のしみ)
  • 近隣トラブル(におい・煙の苦情)

においは「慣れ」で消えません。
苦情も「誠意」では消えません。
だから、物件の時点で“出し方”を見ます。


内覧で必ず見るポイント(換気・排気)

難しい専門用語はいりません。見るのはこれ。

1) どこから空気を吸って、どこへ出すか

  • 室内の空気が、外へ逃げる道 があるか
  • 外へ出したものが、室内へ戻りにくい か
  • 熱い空気やにおいが、作業者の呼吸域(顔の高さ)にこもっていないか

2) 排気の出口と、周囲との距離感

  • 排気が向く先に、人の動線や窓 がないか
  • 近い距離に、住居や飲食 がないか(あればより慎重に)

3) もし“空気の流れ”を確認できるなら、ここを確認する

可能なら、室内の“空気の流れ”を確認します。
(すでに稼働している物件や、送風・換気で風を作れる場合など)

  • 目がしみる
  • その場にいると喉が気になる
  • 店内の奥に“こもる”感じがある

この感覚があるなら、換気は弱い可能性が高い。
(第3話で、ここをもう少し深掘りします)


ここからは現実の話:迷ったら“要所だけ専門家の目を入れる”

ここまでのチェックは、自分でもできます。
でも、物件の最終判断は「自分だけで抱え込む」より、要所だけ専門家の目を入れる ほうが現実的です。

理由は、動線と換気は「設計と工事」の世界で、
契約後に直すとコストも手間も跳ねやすい から。

まずはこの3つに当てると、判断材料が揃いやすい

  • 設備(換気・ダクト):この物件で「外に出す道」が現実に作れるか
  • 店舗設計/建築の人:動線が回るか、置き場と通路幅が成立するか
  • 消防(事前相談):熱源や排気まわりが“運用として通るか”

※大げさに構えなくてOK。「この物件、いけます?」を短時間で当てるイメージです。

専門家に聞くときの質問例

設備(換気・ダクト)に

  • 排気の出口はどこが現実的?戻りにくくできる?
  • 工事の難所はどこ?(壁貫通/屋上/曲がり)
  • 近隣に配慮が必要な点は?

店舗設計/建築の人に

  • この動線(入荷→焙煎→梱包→出荷)は回る?詰まる?
  • 置き場が足りずに床置きになりそうなのはどこ?
  • 梱包台の高さを確保できる?

消防に(できれば早めに)

  • この想定設備で、注意点はどこ?
  • 事前に押さえるべき条件は?(設備・運用)

物件で迷ったら、動線と換気に戻る

家賃、広さ、駅近。もちろん大事。
でも、迷ったときの戻り先はここです。

  • 動線が一筆書きで回るか
  • 換気(排気)が最初から組めるか
  • 不安が残るなら、要所だけ専門家の目を入れられるか

この3つが通る物件は、開業後の消耗が減ります。


忙しい時ほど、これを思い出す(物件編)

「見た目より、回るかどうか。」


明日やること(3つ)

  1. 作業の流れを紙に描く(入荷→焙煎→梱包→出荷)
  2. その順番で現地を歩く(詰まる場所・床置きになりそうな場所を探す)
  3. 排気の出口と周囲の距離感を確認する(窓・人の動線・隣接環境)

他業種の読み替え:焙煎=危険源が集まる工程/梱包=出荷工程/動線=ムダな往復/換気=臭気・熱・粉じんを外へ逃がす仕組み

※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。

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