開業前、いちばんテンションが上がるのは物件探しです。
でも、いちばん後悔が残りやすいのも物件です。
理由はシンプル。
物件の“しんどさ”は、開業後に毎日くる。
そして、後から直しにくい。
この回で言いたいのはこれ。
焙煎所の物件は、動線 と換気(排気)で決まる。
内装がきれいかどうかより、
「回るかどうか」を先に見ます。
まず、焙煎所の動線はこう考える
焙煎所は、作業の流れがおおよそ決まっています。
入荷 → 保管 → 焙煎 → 冷却 → 計量 → 包装 → 梱包 → 出荷
この順番を、できるだけ「一筆書き」にしたい。
往復が増えるほど、疲れとミスが増えるからです。
動線で見落としがちな3つ
- 通路が“人ひとり分”で足りない(箱を持つと詰まる)
- 置き場が決まらず、床が置き場になる(第7話につながる)
- 梱包・出荷が最後に押し込まれて、作業台が低い(第7話・第8話に繋がる)
物件を見るときは、最初に「作業の順番」を決めて、
その順番どおりに歩いてみるのが一番早いです。
換気(排気)は“あとで何とか”が難しい
焙煎所で換気が弱いと、困りごとは2種類出ます。
- 体の不調(頭痛・喉の違和感・目のしみ)
- 近隣トラブル(におい・煙の苦情)
においは「慣れ」で消えません。
苦情も「誠意」では消えません。
だから、物件の時点で“出し方”を見ます。
内覧で必ず見るポイント(換気・排気)
難しい専門用語はいりません。見るのはこれ。
1) どこから空気を吸って、どこへ出すか
- 室内の空気が、外へ逃げる道 があるか
- 外へ出したものが、室内へ戻りにくい か
- 熱い空気やにおいが、作業者の呼吸域(顔の高さ)にこもっていないか
2) 排気の出口と、周囲との距離感
- 排気が向く先に、人の動線や窓 がないか
- 近い距離に、住居や飲食 がないか(あればより慎重に)
3) もし“空気の流れ”を確認できるなら、ここを確認する
可能なら、室内の“空気の流れ”を確認します。
(すでに稼働している物件や、送風・換気で風を作れる場合など)
- 目がしみる
- その場にいると喉が気になる
- 店内の奥に“こもる”感じがある
この感覚があるなら、換気は弱い可能性が高い。
(第3話で、ここをもう少し深掘りします)
ここからは現実の話:迷ったら“要所だけ専門家の目を入れる”
ここまでのチェックは、自分でもできます。
でも、物件の最終判断は「自分だけで抱え込む」より、要所だけ専門家の目を入れる ほうが現実的です。
理由は、動線と換気は「設計と工事」の世界で、
契約後に直すとコストも手間も跳ねやすい から。
まずはこの3つに当てると、判断材料が揃いやすい
- 設備(換気・ダクト):この物件で「外に出す道」が現実に作れるか
- 店舗設計/建築の人:動線が回るか、置き場と通路幅が成立するか
- 消防(事前相談):熱源や排気まわりが“運用として通るか”
※大げさに構えなくてOK。「この物件、いけます?」を短時間で当てるイメージです。
専門家に聞くときの質問例
設備(換気・ダクト)に
- 排気の出口はどこが現実的?戻りにくくできる?
- 工事の難所はどこ?(壁貫通/屋上/曲がり)
- 近隣に配慮が必要な点は?
店舗設計/建築の人に
- この動線(入荷→焙煎→梱包→出荷)は回る?詰まる?
- 置き場が足りずに床置きになりそうなのはどこ?
- 梱包台の高さを確保できる?
消防に(できれば早めに)
- この想定設備で、注意点はどこ?
- 事前に押さえるべき条件は?(設備・運用)
物件で迷ったら、動線と換気に戻る
家賃、広さ、駅近。もちろん大事。
でも、迷ったときの戻り先はここです。
- 動線が一筆書きで回るか
- 換気(排気)が最初から組めるか
- 不安が残るなら、要所だけ専門家の目を入れられるか
この3つが通る物件は、開業後の消耗が減ります。
忙しい時ほど、これを思い出す(物件編)
「見た目より、回るかどうか。」
明日やること(3つ)
- 作業の流れを紙に描く(入荷→焙煎→梱包→出荷)
- その順番で現地を歩く(詰まる場所・床置きになりそうな場所を探す)
- 排気の出口と周囲の距離感を確認する(窓・人の動線・隣接環境)
他業種の読み替え:焙煎=危険源が集まる工程/梱包=出荷工程/動線=ムダな往復/換気=臭気・熱・粉じんを外へ逃がす仕組み
※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。
