夜の担当表に、昼間の支えは入っているか
夜間を含む交替勤務の計画が進んでいる。設備と人の配置は決めたが、健診、相談、体調が変わったときの対応は昼間の前提のまま。開始する前に、夜の仕事を実際の一日として考えます。

二枚目の担当表
生産管理の吉岡は、日勤と夜勤の担当表を並べた。これまでは日中に動かしていた工程を、夜から翌朝にも動かす計画だった。
夜の設備を扱える人は確認してある。引継ぎも、誰がどこで行うかを考えた。工場長へ計画を説明する前、総務兼衛生管理者の大沢にも見てもらうことにした。
「健診は手配しておけばよいですよね。去年の結果は、みなさんそろっています」
吉岡が言うと、大沢は予定している仕事と時刻を確かめた。夜勤を候補にしている人の名前も見た。
「今回の勤務に必要な健診と、その後の対応を確認します。去年受けたことだけで、準備済みにはしないでおきたいです」
工場には産業医がいる。大沢は、変更後の勤務と仕事の情報を使って、必要な健康管理について意見を聞く予定を入れた。
担当表には設備の担当者が並んでいる。体調について仕事中に相談したい場合、誰が受けるかは書かれていなかった。
昼の窓口は閉まっている
大沢は、夜勤の候補者へ計画を説明する場で、困りそうな点を聞いた。河合が手を挙げた。
「夜に気分が悪くなったら、総務へ連絡していいんですか」
普段の案内では、体調の相談は総務から産業保健側へつなぐことになっていた。だが、大沢も保健師も、夜間にいつでも応答する勤務や契約ではない。
「緊急ではない相談なら、翌日に連絡できます。ただ、その場の対応を明日まで待つ形にはできませんね」
大沢は、夜の責任者がどこまで受け持つかを吉岡と確かめることにした。夜にいる責任者を、医師の代わりにするのではない。体調の変化があったとき、仕事を続けることを本人の我慢だけに任せず、必要な連絡と対応へつなぐ仕組みを用意する。
工場の緊急時の連絡も見直した。救急対応の手順、所在を伝える情報、入口へ案内する人。昼間なら事務所にいる人が受けていた役目を、夜に誰が行うかを確かめた。
吉岡は、自分が夜も電話を持つ案を考えた。
「しばらくは、私に連絡してもらえば」
大沢は日勤の担当表も見た。
「夜の連絡も毎日受けたら、吉岡さんはいつ休めますか」
吉岡は答えに詰まった。夜勤の人数は別にしたつもりでも、判断だけは日勤の人へ戻す案になっていた。
夜勤明けの午前中
計画を確認していると、全員向けの研修が見つかった。夜勤が始まる週の午前中に、会議室で行う予定だった。
河合は、その日は朝までの勤務になる。
「終わってから残れば受けられます」
河合が言った。日勤のころと同じように、全員がそろう日に出ればよいと思ったのだった。
吉岡は、朝で終わる勤務と、研修の開始時刻を並べた。
「それだと、勤務が終わっても帰れないですね」
大沢は、夜勤をしている人に生活の工夫だけを頼む前に、会社の予定が休息を妨げていないかを確かめた。研修は別の時間にも実施し、必要な勤務の調整を会社で行う案にした。
健康相談や健診の予定も、日勤と同じ時間に全員を呼ぶやり方でよいかを見直す。受診後に必要な対応を進める相手や、相談できる機会があることまで確かめる。
河合は、昼間に休もうとしても、家の予定と重なる日があると話した。会社がその事情を全部変えられるわけではない。けれど、予定をいつ知らせるか、急な変更をどう扱うかは、会社で考えられる。
吉岡は、勤務表を出す時期と、夜勤の回数や並び方を、休息の取り方も含めて検討することにした。夜勤を希望した人なら、どんな勤務でも負担なく対応できると考えるのはやめた。
産業医へ渡したのは、人数だけではなかった
大沢は産業医へ、勤務の変更案を説明した。予定する時刻と組合せ、夜に行う作業、責任者の配置、健診や相談の計画。休む場所と交替の方法も含めた。
産業医からは、睡眠や休養、健康状態を確認することに加え、健診結果に基づく必要な対応や、個人の状況に応じた相談を進めるための意見を受けた。個々人の詳しい情報は、適切な経路で確認する。
吉岡は、健診に問題がなければ、今の勤務案に適性があると一律に決められるものだと思いかけていた。大沢は、必要な健診を受けることと、変更後の仕事を続けられる条件を確認することを分けて考えた。
工場長へは、生産計画と一緒に、夜の責任者が受ける連絡、その人が離れるときの受け持ち、緊急時対応、勤務や研修の変更を示した。
「夜にいる人だけで、全部判断する案ではありません。昼間へつなぐ相談と、その場で対応することを分けています」
大沢が説明した。
夜の責任者が連絡や対応を担えるよう、説明と確認の時間も実施計画に入れた。
夜の受け手と、勤務後の予定を整える
夜の勤務中に困ったとき
- 働く人から連絡
- 夜の責任者へ。不在時は次の受け手
- 職場の手順に沿って必要な対応へ
当初の研修予定
- 朝まで勤務
- 午前の研修へ残る
- 勤務後も帰れない
予定を見直す
- 研修を別の時間にも実施
- 必要な勤務の調整を会社で行う
総務・保健師の常時応答を前提にせず、通常の相談機会も会社が調整する
始める前に、つながるか確かめる
工場長は、勤務変更の準備として必要な時間と担当を確保した。大沢は、開始前に夜勤の候補者と相談の案内を確かめた。
河合は、通常の相談先と、勤務中にその場で困ったときの連絡先を見た。
「産業医の面談は、夜勤の人も相談できる日があるんですね」
会社で調整した機会を確認し、希望や事情を伝える経路も分かった。昼間の窓口が開くまで一人で抱える前提は変えられた。
吉岡は、別の担当者と連絡の手順を確かめた。予定した責任者が対応中の場合は、次に誰へつなぐか。緊急時の案内に必要な情報は、夜の人が使える場所にあるか。名簿に名前があることと、実際に連絡がつながることを分けて確認する。
開始後は、睡眠や疲労、勤務中の困りごとを相談できるようにし、仕事の状態と必要な医師の意見を踏まえて勤務の運用を確かめる。予定した生産量だけで、交替勤務の結果を評価することにはしなかった。
吉岡は、二枚の担当表をもう一度並べた。夜の欄は、人と設備の名前だけでは埋まらなかった。昼間に自然に使えていた支えを、どの形で夜にも用意するかが、勤務を始める前の仕事として残っていた。
河合には、研修の日程の変更も伝えた。
「勤務が終わったあと、残って受けなくてよくなりました」
吉岡はそう説明して、準備の予定へ印を付けた。夜勤が始まる日までに確かめることが、前より具体的になっていた。
自分の職場で考えるとき
深夜業を含む業務に常時従事する労働者については、特定業務従事者の健康診断として、配置替えの際と六か月以内ごとに一回の健診が必要です。対象となる勤務の実態や省略可能な項目などは、適用される法令に沿って確認します。[1] 交替勤務という呼び名だけで、全員の対応を一律には決めません。
夜間を含む勤務では、睡眠や生活の時間が変わります。厚生労働省の睡眠ガイドでも、交替制勤務は身体への負担がある勤務形態として扱い、一般的な睡眠の助言をそのまま適用しにくい場合があることを示しています。[2] 本人への生活上の助言に加えて、休息を妨げる会社の予定や勤務の組み方も確かめます。
勤務時間の変更は生活にも影響するため、労使で話し合うことが重要です。[3] 会社では、健診と必要な事後対応、日常の相談、夜間の責任者と緊急時の連絡を、実際に利用できる形へ準備します。個別の医学的な適性や、体調変化に対する判断を社内担当者だけで決めることは避けます。
講話では、「昼間だから使えていた支えのうち、夜にも必要なものは何か」を考えてみてください。電話番号だけでなく、誰が応答し、その人が休むときどうするかまでたどれます。
参考資料
- 厚生労働省 労働安全衛生規則。第45条の特定業務従事者の健康診断を参照。
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023。参考資料「就業形態(交替制勤務)と睡眠の課題について」を参照。
- 厚生労働省 労働基準法等に関するQ&A・その他。深夜勤務への変更についての話合いと健康管理を参照。震災時の節電対応に関するQ&Aであるため、その背景と一般的な考え方を区別した。