売れ始めると、現場は一度、勢いで回ります。
多少雑でも「とりあえず出荷」は回る。睡眠を削れば波を越えられる。
怖いのは、「通ったやり方」が基準になることです。
「今日もいけた」
「今週も乗り切れた」
そうやって、基準が静かに下がっていきます。
最初に増えるのは、クレームより先に“手戻り”と“疲労”です。
ここから事故が増えます。
品質が崩れ始めると、安全も一緒に崩れます。
品質が落ちると、何が起きるか。
・やり直しが増える(封が甘い/ラベル違い/重量ズレ)
・確認が増える(不安になって二度見する)
・締切が詰まる(夜に持ち越す)
・焦りが増える(声が荒くなる/動きが速くなる)
焦りが増えた日に、手が滑る/寄る/落とす、が起きます。
だから第19話は、品質の回であり、運用の回です。
ここで決める:「最低ライン」を先に固定する
“理想の品質”を追いかけると止まります。
ここで必要なのは、最低ラインです。
守るのは、“下回ったら止める基準”です。
最初は3つに絞ると回ります。
1) 出荷の最低ライン(間違いが出ると致命傷)
2) 衛生・安全の最低ライン(ケガと火災に直結)
3) 休息の最低ライン(判断力が落ちると全部が崩れる)
焙煎所×ECの最低ライン(例)
※現場で差し替え前提の例です(雛形として)。
出荷の最低ライン
- ラベル:品名/内容量/賞味期限の3点は必ず確認
- 重量:基準から外れたら出荷しない(その場で戻す)
- 封:触って分かるレベルの甘さは、その場でやり直す
衛生・安全の最低ライン
- 熱源まわり:通路に物を置かない(置いたら終業前に戻す)
- 清掃:堆積が増えている場所は、週内に手当てする
- チャフ・焦げ片:回収は冷ましてから(くすぶりの芽を残さない)
休息の最低ライン
- 終業前に「明日の3点(締切・在庫・段取り)」を書いて区切る
- 睡眠が削れた日は、判断が要る作業を後ろに回さない
- 無理な前倒しを続けない(波を平らにする方が強い)
“守る基準”は、紙に書いて貼ると強い
頭の中にある基準は、忙しい日に消えます。
貼るのは、長いルールではなく短い言葉です。
例)
「ラベル・重量・封は、出荷前に必ず確認」
「通路は置かない。熱源まわりは寄らない」
「終業前に3点を書いて区切る」
これで、出荷前に揉める/二度見する/戻る、が減ります。
売上が伸びる時ほど、増やすより削る
忙しい時に「チェック項目を足す」と現場は止まります。
やるなら逆です。
- 確認点を減らす(最低ラインに絞る)
- 段取りを減らす(同じ動きに寄せる)
- 受け渡しを減らす(置き場と順番を固定する)
増やさず、削って回す。
第4章の入口はここです。
忙しい時ほど、これを思い出す(最低ライン編)
「上を目指す前に、下を割らない。」
明日やること(3つ)
1) 見る:手戻りが増えている場所を1つ特定する(封/ラベル/重量/清掃など)
2) 決める:「下回ったら止める基準」を3つに絞って紙に書く
3) 直す:その紙を“作業場の目線の高さ”に貼り、明日から運用に乗せる
他業種の読み替え:焙煎=熱源工程/封止=反復工程/梱包=出荷工程/最低ライン=運用品質の床
※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。
