売れ始めると、嬉しい反面、現場が一気に細くなる。
作業そのものが増えるというより、「同時に抱えるもの」が増える。
焙煎のタイミング。冷却。袋詰め。ラベル。梱包。発送。
メール返信。問い合わせ。クレームの気配。SNSの通知。
在庫の数字。発送締切。家族の予定。体の疲れ。
そして、そんな日が来る。
なぜか全部が重なる日。
その日は、朝からペースが違った。
焙煎は予定より押し気味。冷却が終わらない。
袋詰めの列が崩れ、ラベルが足りないことに気づくのが遅れる。
口の中が乾く。手は動くのに、頭が追いつかない。
そこで店主さんは、やってはいけないことをやる。
「一気に取り返す」モードに入る。
- 2工程を同時にやる
- いつもより速く手を動かす
- 確認を省く
- “だいたい”で進める
この瞬間、現場は事故モードに入ります。
焙煎所のミスは「技術」より「焦り」
焙煎の腕が下手だからミスるんじゃない。
梱包が下手だから事故るんじゃない。
焦っているときに、判断の粒度が荒くなる。
これが本体です。
焦りは、作業のスピードを上げます。
でも同時に、次の3つを落とします。
- 確認(ラベル・重量・封止・発送先)
- 段取り(手元の配置・動線・次の工程の準備)
- 安全(熱・刃物・姿勢・滑り・火)
だからピーク時の事故は、たいてい「焦り」が原因に見える。
「ミスが出る日」を潰すのは、技術じゃなく運用
この話、精神論にすると負けます。
「落ち着け」では止まりません。
落ち着けない日が来るから。
やるべきはこれ。
焦りが出る前提で、焦っても壊れない運用にする。
鍵は2つです。
- 刻む(分割する)
- 止める(止まる地点を作る)
1) 刻む:仕事を「小さくする」とミスは減る
焦る日は、仕事が“塊”に見えます。
発送50件、返信20件、焙煎3回。全部が巨大に見える。
だから、刻む。
刻み方(現場で効くやつ)
- 10件ずつで区切る(梱包10件→確認→次の10件)
- 工程を分ける(計量だけ→封止だけ→ラベルだけ)
- 今やることを1つにする(同時進行をやめる)
「一気に終わらせたい」が事故を呼ぶので、
一気に終わらない設計に寄せる。
2) 止める:事故が起きる前に“止まれる場所”を作る
焦りが一番危ないのは、止まれなくなることです。
- なんとなく続ける
- なんとなく進む
- なんとなく出荷する
これを止めるには、「止まる地点」を固定します。
止まる地点(最低3つ)
- 出荷前:宛名/商品/個数の3点を声に出して指差しして止まる
- 焙煎前:排気ON/引き(吸い込み)OK/冷却まわり詰まりなしを確認して止まる(30秒)
- 終業前:明日の締切/在庫/やり残しを“紙に1行”書いて止まる(頭を閉める)
止まる地点があると、焦りが“流れっぱなし”にならない。
焙煎所×ECで特にミスが増えるポイント
焦る日に事故るのは、たいていここです。
- ラベル(似た商品名、似たデザイン、貼り間違い)
- 重量(計量の取り違え、すくい方の癖)
- 封止(ズレ・甘さ、やけど)
- 発送先(住所コピペ、入力ミス)
- 在庫(実物と数字がズレる)
だから、対策もここに寄せるのが早い。
忙しい時ほど、この一言(ミス編)
忙しい日は、立派なルールは読まれません。
短い合言葉に圧縮して残す。
「一回止めよう。10件で区切ろう。」
補足するなら、これ。
「迷ったら止める。止めてから決める。」
明日やること(3つに絞る)
- 区切りを決める(梱包は10件単位、返信は5通単位、など)
- 止まる地点を3つ作る(出荷前/焙煎前/終業前)
- 同時進行しないをルールにする(今やることは1つ)
※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。
