第9話 ミスが出る日:ピーク時の事故は「焦り」で起きる(刻む・止める)

売れ始めると、嬉しい反面、現場が一気に細くなる。
作業そのものが増えるというより、「同時に抱えるもの」が増える。

焙煎のタイミング。冷却。袋詰め。ラベル。梱包。発送。
メール返信。問い合わせ。クレームの気配。SNSの通知。
在庫の数字。発送締切。家族の予定。体の疲れ。

そして、そんな日が来る。

なぜか全部が重なる日。


その日は、朝からペースが違った。
焙煎は予定より押し気味。冷却が終わらない。
袋詰めの列が崩れ、ラベルが足りないことに気づくのが遅れる。

口の中が乾く。手は動くのに、頭が追いつかない。
そこで店主さんは、やってはいけないことをやる。

「一気に取り返す」モードに入る。

  • 2工程を同時にやる
  • いつもより速く手を動かす
  • 確認を省く
  • “だいたい”で進める

この瞬間、現場は事故モードに入ります。


焙煎所のミスは「技術」より「焦り」

焙煎の腕が下手だからミスるんじゃない。
梱包が下手だから事故るんじゃない。

焦っているときに、判断の粒度が荒くなる。
これが本体です。

焦りは、作業のスピードを上げます。
でも同時に、次の3つを落とします。

  1. 確認(ラベル・重量・封止・発送先)
  2. 段取り(手元の配置・動線・次の工程の準備)
  3. 安全(熱・刃物・姿勢・滑り・火)

だからピーク時の事故は、たいてい「焦り」が原因に見える。


「ミスが出る日」を潰すのは、技術じゃなく運用

この話、精神論にすると負けます。

「落ち着け」では止まりません。
落ち着けない日が来るから。

やるべきはこれ。

焦りが出る前提で、焦っても壊れない運用にする。

鍵は2つです。

  • 刻む(分割する)
  • 止める(止まる地点を作る)

1) 刻む:仕事を「小さくする」とミスは減る

焦る日は、仕事が“塊”に見えます。
発送50件、返信20件、焙煎3回。全部が巨大に見える。

だから、刻む。

刻み方(現場で効くやつ)

  • 10件ずつで区切る(梱包10件→確認→次の10件)
  • 工程を分ける(計量だけ→封止だけ→ラベルだけ)
  • 今やることを1つにする(同時進行をやめる)

「一気に終わらせたい」が事故を呼ぶので、
一気に終わらない設計に寄せる。


2) 止める:事故が起きる前に“止まれる場所”を作る

焦りが一番危ないのは、止まれなくなることです。

  • なんとなく続ける
  • なんとなく進む
  • なんとなく出荷する

これを止めるには、「止まる地点」を固定します。

止まる地点(最低3つ)

  • 出荷前:宛名/商品/個数の3点を声に出して指差しして止まる
  • 焙煎前:排気ON/引き(吸い込み)OK/冷却まわり詰まりなしを確認して止まる(30秒)
  • 終業前:明日の締切/在庫/やり残しを“紙に1行”書いて止まる(頭を閉める)

止まる地点があると、焦りが“流れっぱなし”にならない。


焙煎所×ECで特にミスが増えるポイント

焦る日に事故るのは、たいていここです。

  • ラベル(似た商品名、似たデザイン、貼り間違い)
  • 重量(計量の取り違え、すくい方の癖)
  • 封止(ズレ・甘さ、やけど)
  • 発送先(住所コピペ、入力ミス)
  • 在庫(実物と数字がズレる)

だから、対策もここに寄せるのが早い。


忙しい時ほど、この一言(ミス編)

忙しい日は、立派なルールは読まれません。
短い合言葉に圧縮して残す。

「一回止めよう。10件で区切ろう。」

補足するなら、これ。

「迷ったら止める。止めてから決める。」


明日やること(3つに絞る)

  1. 区切りを決める(梱包は10件単位、返信は5通単位、など)
  2. 止まる地点を3つ作る(出荷前/焙煎前/終業前)
  3. 同時進行しないをルールにする(今やることは1つ)

※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。

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