焙煎所は、熱源がある現場です。
しかも厄介なのは、熱が「見えない」こと。
金属は黒くても熱い。
冷えて見えても熱い。
そして、いつもの手順でも——忙しい日・焦った日・片手が塞がっている日に、事故が起きます。
火傷は「触る前」に決まっている
火傷は「触ってから起きる」と思われがちですが、現場では逆です。
触るつもりはないのに、体や手が“熱い所に当たってしまう”のです。
- 通り道が狭い → 体をひねってすり抜ける → 袖・前腕が当たる
- 手に物を持っている → とっさに手が出ない/バランスが崩れる → 当たる
- 話しかけられる → 一瞬目をはなす → 意図せず寄ってしまう → 当たる
第4話の芯はこれです。
危険区域を「言葉」で固定する。
(ここは熱い/ここから先は入らない/触る前に声をかける)
先に決める:危険区域(ホットゾーン)
現地で、焙煎機まわりに立ってみてください。
「この範囲に人が入ると危ない」が、見えてきます。
焙煎所だと、特に“熱が残りやすい場所”がいくつかあります。
- 焙煎機本体まわり(投入口・排出口の周辺を含む)
- 冷却まわり(冷却トレー/冷却機の周辺)
- 排気・チャフ回収まわり(ダクトの接続部、チャフ回収のフタ付近 など)
危険区域は、難しく考えず “一周ぐるっと” でいい。
ポイントは、床に置かれたもの/仮置き/通り抜けが、このゾーンに侵入しないことです。
まずはこの3つをルールにします。
- ここに箱を置かない
- ここをショートカットしない
- ここで立ち話をしない
言葉を決める:合言葉を固定する
危険区域を決めたら、次は言葉。
長い説明より、短い合言葉が効きます。
(あなた自身が、忙しい日に言える長さが正解です)
例:
- 「そこ、熱い」(最短)
- 「ここから先は入らない」(区域の言葉)
- 「触る前に声かけ」(作業の言葉)
ここで大事なのは、丁寧さより一貫性。
毎回同じ言葉で止めると、現場が静かに整っていきます。
触る前の「一呼吸」を仕組みにする
火傷は反射で起きます。
反射を止めるには、反射の手前に“間”を作る。
たとえば、作業の区切りにこれを入れます。
- 触る前に、指差しで確認(熱い面・熱い部品)
- 片手が塞がっている時は近づかない(搬入・片付け中、荷物を持っている時)
ここは精神論ではなく、事故が起きる条件(片手・狭い・焦り)を潰すことです。
忙しい時ほど、これを守って(熱編)
「そこ、熱い。」
まず言う。次に動く。
もし火傷したら(応急の目安)
※ここは「壁に貼れる」長さにしておくと回ります。
すぐに冷やす。
(冷たい流水で10〜20分ほど。冷やす時間は諸説ありますが、まずはしっかり冷やす)
指輪・時計など締め付ける物は、腫れる前に外す(無理はしない)。
服が皮膚に貼り付いている場合は、無理に剥がさず周りを切って冷やす。水ぶくれは潰さない。
広い範囲/強い痛み/白っぽい・黒っぽい/顔や関節などは医療機関へ。
明日やること(3つ)
- 焙煎機まわりに立って、危険区域(ホットゾーン)を決める(通路・仮置きも含めて)
- その区域を止める合言葉を1つ決める(例:「そこ、熱い」)
- 火傷時の短い手順を1枚にして貼る(冷やす/指輪・時計は外す/貼り付いた服は剥がさない/水ぶくれは潰さない/受診目安)
他業種の読み替え:焙煎=熱源工程/冷却=“熱が残る場所”/排気まわり=高温部+動線の交差点
※本連載は、複数の現場の“あるある”を詰め込んで一般化し、分かりやすさのために再構成した架空の設定です。
